2018年1月25日木曜日

「いのち・暮らし・人権を考えるシンポジウムー原発震災と奪われた人権ー」盛会となりました。

「いのち・暮らし・人権を考えるシンポジウムー原発震災と奪われた人権ー」を、1月21日午後、郡山市の市民交流プラザで開催しました。ひだんれんとしては初めてのシンポジウム開催でしたが、160余人にご参集いただき会場満員の盛会となりました。
ご参加、ご協力の皆さま、ありがとうございました。



原発事故による被害を人権侵害ととらえ、どうやって奪われた人権を取り戻していくのか、個別の具体的な課題に取り組む前に、福島の現実を総体として把握したいと考え、前半は基調講演とそれぞれの登壇者からの発言、後半はパネルディスカッションが行われました。

ここで話し合われた内容は、今後のひだんれんの活動にとって大変示唆に富むものとなりました。
(報告の内容は、ひだんれん幹事で当日のパネルディスカッションのコーディネーター、佐藤和良さんのブログ「風の便り」より抜粋させていただきます)


全体の録画はこちらです。UPLANの三輪祐児さんより
ひだんれん「いのち・暮らし・人権を考えるシンポジウム」


◆今井照さん(公益財団法人 地方自治総合研究所主任研究員)から「『政治・行政』の考え方と市民自治」と題して基調講演がありました。




自民党長期政権下での官僚主導の行政運営、小泉内閣に至る自民党内閣による「改革」などを経て、地域の政治・行政組織としての自治体の現状は、「地方分権」の名のもとに集権化・一元化が進み、国による自治体統制が強化されている実態を示しました。

その上で、市民が使いこなすための「そもそも自治体とは何か」として、土地の区分としての自治体(住所)、地域社会としての自治体(人と人との関係)、 地域の政治・行政組織としての自治体(ガバメント)であると定義し、
「生きる場としての地域・自治体」の再建をめざすとして、多様性を保障する自治体〜個別具体的な地域における市民自治の論理、政治・行政共同体としての自治体〜「地域自治組織」に押し込められることなく、縮小社会の到来のなかで、政治の当事者となる市民が政治争点の日常化、全般化を進めていくべきと述べました。

今井照さんの当日講演レジュメはこちらです。
 



◆憲法学者の中里見博さん(大阪電気通信大学工学部人間科学研究センター教授) 原発賠償京都訴訟の原告でもあります。



人権の視点から、「現実をどのようにとらえるか」として、最近刊行された「しあわせになるための『福島差別』論」について、「被曝の健康リスクは大したことはない、という結論が前提にある」と指摘。
「差別と分断を乗り越えるためにと言いながら、立場が一方に偏っていて本の作り手が分断されたままで、どうやって読者に分断を乗り越えることが期待できるのか」と疑問を投げかけました。
また、科学の優越性が前提となっているが、低線量被曝の健康リスクなど社会的、政策的レベルでのリスク評価は「<科学的に不確実である>ことに関して、リスク評価は市民社会=主権者が行うべきだ」とし、「健康リスクにかかわる平穏生活権」(平穏のうちに生活する権利)が提唱されていることを説明しました。

中里見博さんの当日発言メモはこちらです。

◆医療の立場から崎山比早子さん(特定非営利活動法人 3・11甲状腺がん子ども基金代表理事)
 


被曝の健康リスクについて、「放射線ほど身体に与える影響がわかっているものはないのに、何故専門家の意見が分かれているか。専門家が市民にデータを公表していないから」と厳しく指摘しました。

また、福島県による県民健康調査の甲状腺検査に対する過剰診断論についても、福島県県立医大の「鈴木眞一教授は過剰診断ではない、と否定している」と説明しました。
時間が足りなく準備したすべての資料を説明していただくことができず残念でしたが、資料を添付しましたので、ご覧ください。


 
 
◆市民の立場から千葉由美さん(いわきの初期被曝を追及するママの会代表)
 
 


 初期被曝をしてしまった子どもたちを守りたいと、追加被曝を防ぐ体制づくりをめざして、TEAMママベク子どもの環境守り隊をつくり、学校周辺の土壌など子どもの環境の放射能測定を継続し、子どもたちの被曝防護策を求めるため、行政との長期的な協議を行ってきたこと、を報告しました。
 
 ◆パネルディスカッション
 
  4人のパネラーの皆さんとコーディネーターの佐藤和良さん
 
パネルディスカッションでは、「被害者としての責任を果たす」がキーワードの一つとして語られました。原発事故の収束も見通せない中、放射線被曝を軽視した帰還政策が強行されるなかで進む人権侵害に対して、被害の原点に立ち戻りながら、厳しい現状に甘んじることなく、分断を超えていくこと、被害者がつながることで、子どもたちや未来世代のために、奪われた人権を取り戻して行くことを確認しあいました。
 
共に考え、共に状況を変えていくために、今後のシンポジウムの継続開催の声も聞かれました。
 
◆ひだんれんは今年も各団体が手を携えて、被害者の命・暮らし・人権を取り戻すための活動を続けます。
どうぞ、よろしくご支援ください。
 

 ひだんれん 参加各団体の団長、代表の皆さん






 

2018年1月14日日曜日

山形地裁 「住宅明渡し訴訟第2回口頭弁論」報告

福島県避難指示区域外から、山形県米沢市の雇用促進住宅に避難した8世帯に対し、住宅を監理する独立法人が立ち退きと家賃の支払いを求める訴訟が起こされています。

1月12日(金)山形地裁での「住宅明渡し訴訟第2回口頭弁論」の傍聴と報告集会に参加しました。

傍聴席27席に対し60名以上が並び、この裁判への関心の高さが示されました



以下、報告集会での福田弁護士の解説の要約です。

 ◆今回は訴訟の枠組みの変化があった。

・「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」(以下、機構)が、昨年10月31日に雇用促進住宅の一括売却をし信託契約が締結されて、実質的な所有者は「東日本民間賃貸サービス合同会社」となり、ここが大阪にある「ファースト信託株式会社」に委託している。

・現在、受託者として住宅管理をしているファースト信託が裁判に参加してきた。実質的にはファースト信託が、原告として裁判を遂行していく。

・機構は裁判からは脱退し、残っているのは4月~9月末までの家賃を請求する部分だけとなる。

・原告代理人は機構とファースト信託の代理人となる。

◆今回の裁判手続きは


・ファースト信託が参加申立書を提出した。

・機構と被害者間のさまざまな法律関係について明らかにせよとした求釈明に対する回答した書面が原告から提出された。

・こちらからは準備書面1を提出した。内容は、住宅供与打ち切りは国際人権機関においても、問題があると指摘されている。裁判所としても公正な審議を求めるというもの。

◆本日のやり取りで明らかになったこと。

・原告が被害者に対して、訴訟を起こしてでも追い出しをしようという強い対応の割には、法律関係は杜撰な管理をしている。例えば、機構は被告と機構の間に使用貸借契約が成立しておりそれが3月末で打ち切られたと主張していたが、準備書面ではこれを根本から覆して貸し主は子会社であるSK協会であるとしている。

・更新については毎年更新していたとするが、そのような書類は作成されていない。
機構の言い分は、雇用促進住宅に1年間延長するという貼り紙をしていた。入居者はそのまま住み続けていたので黙示の契約が成立していたとしている。
去年3月で打ち切るという明確な書面を出すことはできないでいる。
また、貼り紙は機構の名前で出されていて、貸主だとされるSK協会の名前ではなかった。

重要 福島県が機構から借り上げるという書類が作成されている。機構理事長と福島県知事の公印が押してあるものだ。そうであれば貸主は福島県ではないのか。それには一切触れずに、機構はSK協会が貸主だと主張していて、支離滅裂である。

重要 機構という公的主体から、雇用促進住宅が民間主体に譲渡された。譲渡契約の中で公的な性格を民間に引き継がせるためにいろいろな約束をさせているはず。例えば雇用促進住宅の入居者については10年間は同じ契約にするなど、その証拠を機構は持っているはずだ。
これが重要なのは、譲渡契約の特約の中に災害救助法に基づく応急仮設住宅に関しては、譲渡の段階で入居者に有効に、譲り受け人がそのまま引き継ぐということが入っているはずだが、機構はそれを出してこなかった。
出すと譲渡契約に基づいて居住する権利があると主張することを恐れて出してこなかったのではないかと思い、今回はこれを提出するよう要求した。(2週間以内に書類が提出される予定である。)



海渡雄一弁護士 
「住宅の公的性格を際立たせ、避難世帯への補助打ち切り政策が正しいものか、争点にしたい」

井戸謙一弁護士 
「国も福島県も姿を隠し、“民民”間の問題にされようとしている。
原告はファースト信託株式会社。国でもなければ、福島県でもありません。雇用支援機構から住宅を購入した東日本賃貸サービス株式会社から住宅の信託を受けた会社です。
自主避難者の追い出しの責任ある国や福島県は表に出ないで隠れている。

原告は、避難者に住宅を貸していたのは雇用促進機構だったと主張しています。
しかし本日の期日(1月12日)で我々避難者側は、福島県が雇用促進機構から雇用促進住宅を一括して借り上げる旨の福島県知事と機構理事長の公印を押した確認書を証拠提出しました。
福島県が一括借り上げたのなら、避難者に供与したのは福島県であり、明け渡しの原告になるべきなのは福島県です。

責任ある者が裏に隠れるからくりをあばかなくてはなりません」
                                  
次回 第3回口頭弁論は3月20日午後2時から 
山形地裁にて。




現裁判長は3月までで、4月から新しい裁判長となることが弁護団より報告されました。











<福島県交渉>第29回県交渉質問事項及び回答

ひだんれんと、避難の権利を求める全国避難者の会、避難の協同センターの3団体は、29回目となる福島県交渉を行いました。 開催日時:2023年8月15日(火) 14時~15時 開催場所:オンライン 参加者: <福島県> ・原子力安全対策課:水口昌郁 主幹兼副課長 ・原子力安全対策...